日ごろからのアンディ・ラウ贔屓が災いして、マーク・チャオへのキャストチェンジを素直に呑めないのも愉しみきれなかった一因だ。アンジェラベイビーを眺める悦びにしても『メモリー　Ｆｉｒｓｔ　Ｔｉｍｅ』（これもマーク・チャオとの共演作だ）と較べればやや劣る。化け物が存分に暴れる大ハイライトを黒幕の成敗後に用意する構成などは太々しくも真摯で好ましいが、「蟲」が作劇手段として万能すぎるあたりは少しく興醒めを覚えずにいられない。もっとも、この種々雑多の要素が詰め込まれたシナリオを首尾よく映画化できる辣腕の演出家は（ハリウッドを除けば）世界にもそうそう多くいないだろうことを認めるにやぶさかではない。