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[コメント] 少林少女(2008/日)

「船頭多くして船山に上る」の典型の様な映画。久々に心底くだらない映画を金払って見てしまった。矛先がぶれすぎてナニを描きたかったのか全くわからない。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく面白くない。全てのシーン、全てのカット、全てのコマの一つ一つに突っ込みどころがある。そんな感じの映画である。

この映画の本家である『少林サッカー』は、極限まで鍛えた能力者達が、自らと、そしてその一門の名誉をかけて、よこしまな連中に打ち勝つ物語である。

およそ「少林ナントカ」を名乗る映画であれば、まずこの基本パターンを踏襲し、勧善懲悪の名の下に、バカバカしいほどの超絶破壊技をこれでもかとスクリーンいっぱいに繰り広げるべきだろう。この映画のキャッチコピーである「彼女に日本は狭すぎる」を体現するためにも、それは不可欠のハズだ。

ところがこの映画、開始から1時間半くらいの間、ほとんどアクション場面が無いのである。まずこの点に驚かされた。ストリングスのロングトーンを多用した感動系BGMの多さも耐えきれない。こんなフニャフニャ音楽を必要とするような物語構成自体が間違っているとしか言えない。

フジテレビ制作の映画では定番的になっている岡村隆史の起用法にも疑問がある。彼のスタンスは本来「めちゃイケ」の中で使う映画ジャックやコンサートジャックの企画の一つとして添え物的な登場の仕方をすべき所だが、前回の『踊る大捜査線』から少々暴走気味なのではないかと感じる。彼が映画俳優ではないことを、ハッキリさせた上で起用した方が良いと思う。

それより何より、問題は柴崎コウだ。「少女じゃないよね?」というそもそも論には、この際目をつぶるとして、彼女の走りや動きが、あからさまに「どんくさい女」という雰囲気なのだ。帰郷直後に駅の階段を側転で下りるシーンで、明らかにどっすんと着地ミスをかましている。走っているときの手の振り方も、3000日の修行に鍛えた人間の手の振り方では明らかにないのである。

物語は「少林ラクロス」で行くのかと思ったら、突如復讐劇兼人質奪還劇へと変わってしまうという迷走ぶりだ。雑魚キャラと中ボスを倒しながら塔の上にたどり着くという『死亡の塔』のパロディなのかゲームっぽい作りなのか良くわからない道行きがそもそも幼稚だ。そして最後のボスキャラである仲間トオルが道場破りに走っていた動機も「世界で一番強いのは誰か知りたい」という全く子供じみたもので、何の説得力もない。さらに最後の最後が「北風と太陽」的決着の仕方とは開いた口がふさがらない。悪行の限りを尽くした相手と仲直りして終わりとは、まるで順位を付けないかけっこのようなくだらなさだ。

優れたストーリーテラーの創作物ではなく、たくさんのビジネスの利害を代表した制作スタッフ団による「船頭多くして船山に上る」の典型的な迷走映画だ。キリヤ監督の『キャシャーン』以来、久々にくだらない映画に金を払って見てしまったと思う。とにかく、語りたいことの矛先がぶれすぎで、ナニを描きたかったのか、観客をどんな世界に連れて行きたかったのか、さっぱり判らないのである。

エンドロールは日本の映画に良くあるエピローグ披露パターンである。ここでようやく少林ラクロスが展開されるのだが、相手がごく普通のチームであるため「単なる弱いモノいじめ」でしかなくなっており、99対0のワンサイドゲームでありながら全く爽快感を感じることが出来ない。さらにはこのエンドロールにかぶさる、とってつけたような mihimaruGT のエンディング曲に「勝ったって意味がないから」的歌詞が付いているので、なおさらちぐはぐな感じである。

めちゃめちゃ書いてしまったが、本当にこれはつまらない映画だ。

□□□ 映画と喫煙について □□□

劇中、江口洋介が、くわえ煙草をするシーンがある。およそ激しいスポーツを志す者が煙草を吸っていること自体ナンセンスであり、なんかのギャグなのかという感じなのだが、それをまた映像として表現してしまうあたりにも制作者のセンスの悪さと節操のなさと品位のなさを感じる。(本家の『少林サッカー』では選手の喫煙はギャグの一つとして使用されていた)JTからどれだけ金もらってるのか知らないが、煙草の害が論じられて久しい昨今、少なくとも公の場での喫煙を助長するような表現は避けるべきだろう。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けんぼう200X[*]

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