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[コメント] クロユリ団地(2013/日)

そもそもこんな映画に一片の期待をいだいてしまった自分に問題があるとしか言いようがないのだが、それにしても、もう少し上手く撮れなかったのかと思う。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画としてもだが、特にホラー映画として、非常に拙(つたな)い。

例えば最初にジジイの死体を発見するシーン。まず電気の止められている部屋で異臭がした時点で普通は119番である。だがこの映画では蛮勇を奮って部屋のその先に進んでいく。こういう基本的なところに現実味がないので、そこから先のカットが説得性をもって展開していかない。

次にジジイの霊に出会う場面。くるっと振り向いたジジイが、ゆーっくりゆーっくりとこっちに歩いて来るのだが、ホラー映画ならここで当然手元の明かりがチカチカッと点滅して、パッと明かりの点いた瞬間にジジイが目の前にババーンと急接近とか、テケテケみたいに高速でジジイが這ってくるとか、そうあるべきではないのか?

主演女優とその家族が話すシーン。別撮りみたいにおかしな間(ま)で進行するのだが、それが主演女優の演技のヘタさによるものなのか、意図的なものなのか、ネタバレ直後まで判然としないのである。「判然としない」ということが意図的な表現ならそれで合格だが、稚拙さ故の破綻だと思われてしまう時点でダメだと思う。

その他にも「来るぞ来るぞ」と思わせて結局来ないというシーンが散りばめられている。

ホラー映画としてそうあるべき展開をあえて外すという試みは買う。しかし、そういう定石外しは実力が伴ってこそだ。表現を裏付ける力(ちから)がないから、映像はものすごく薄っぺらいものになってしまう。

例えば、ナニモノかがドアをノックして、それをドアの覗き窓しに確認しようとすると、だれかの目がバン!と登場するが、実はそれはタダの郵便配達人であったとかそういうフェイクとか遊びの類すら用意されていない。

登場人物それぞれのネタバレも早い。上映時間は二時間弱なのに、一時間くらいで全てのネタが明かされる。こういうのは最後の最後に刑事の口から問わず語りでモンタージュされるとか、あるいは最初におもいっきりネタバレしてしまうとか、もっと極端なやり方もあったのではないか?

実は全て主演女優が監禁されている精神病院のベッドでの妄想だったとか、そういうミスリードの仕方ももっとあったはずだが、遺品整理会社の男性という余計な登場人物をリアルに織り込んでしまったために、そういう解釈の多面性をも持ち得ない。

長い長い時間を使っても結局できあがったものは非常に退屈な上、ホラーですら無くなっている。

原作は読んでいないので、この映画がどの程度忠実なのかそうでないのか分からないが、映画としては非常に拙い。とても残念な映画だと思う。

原作ありきなのでおかしなことを言ってしまっているかも知れないが、主人公危機一髪の間際に、主人公の亡くなった家族が全員出てきて妨害するという展開も考えられなかったのだろうか。主演女優の立ち位置を考えると、そういう改変も許されるのではないかと思ったが。

(評価:★2)

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