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[コメント] イノセンス(2004/日)

BATOUは実に中途半端だ。突き抜けた素子とは違う。
たかひこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ドライフードの利便性は拒絶し"生(ナマ)"に拘ってみるものの、自らの義体化は受け入れてしまう。ラストでもBATOUは揺れている。人形の声から"人"の存在に勘付いた彼は、助けてはみるものの、少女の極めて真っ当な実存的叫びは届かない。それは再会した素子の存在が大きいのだろう。利便性の彼方で思念と化したかつての相棒。うまく消化しきれない自分。

押井は何を考えているのか。容易に透けて見える"人間-人形"="リアル-アニメーション"の構図。少女に対し、BATOUは実に真剣な面持ちで人形優位を説いてみせた。これはリアルへの挑発だ。利便性の追求は生身の人間の不在を招く。それでいいのではないか、と。ただ同時に、それが果たされぬ夢でしかないこともわかっているのだろう。語る言葉とは裏腹に、プロットとしてはあくまでも人間救出なのだから。彼は、このような両義性の狭間にたゆたっているよう見える。思えば、アニメーションにおける豊穣なディティールとはなんと皮肉なことだろうか。

(評価:★4)

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