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[コメント] ひとりで生きる(1992/仏=露)

土佐の〜高知の〜はりま〜やば〜しで〜。耳から離れません。
saku99

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前作に比べ、かなりシュール。というかわかりにくい。それに無意味に下品。

漫然と見ていたら眠気が襲ってきてつらくなったほど。しかし、これは現実世界ではないと考えると、妙に納得。

「動くな〜」のラストでワレルカ少年も実は死んでいた。自分の死に気づかないワレルカの現世をさまよう姿の物語が「ひとりで生きる」なのだろう。

冒頭で捕虜のヤマモトが出てくるが、そこに監督の声がかぶさり、巻き戻される。これは、前作のラストで発狂した女を撮っているときに、監督の言葉が入っていたことの続きなのだ。もうそこから現実の世界をそのまま構築した物語ではなくなっている。

ヤマモトは日本に送還されたはずなのに、スターリンを暗殺しようとして、また捕虜になっている。前作で死んでしまったガーリヤの妹が、姉とまったく同じ顔でしかもワレルカに恋をしている。ワレルカ少年の現世への想いがそこに表れている。

足の骨が飛び出るほどの大怪我をして担ぎ込まれてきたが、次のシーンでは怪我の痕跡もなくピンピンしている。船のロビーにはなぜか赤子を抱いた裸の女が立っている。寝ている女の子がいきなりボコボコに殴られ、それを助けるでもなくただ横で見ているワレルカ。これらはまったく現実味がない。

そして脈絡もなく、スキンヘッドの不気味な男が子供たちに石を投げつけられるシーン。あの男は死んだワレルカがさまよう姿なのではないか。子供たちにはそれが見えるのだ。校長へのいたずらに使った、長くてやわらかい棒のようなものを持っている。すべては現実ではない。

ラストでは、小部屋の中で棺桶に入っているガーリヤと死んだ母を発見する。周りには裸の男が二人、這い回っている。もう寺山修二的な世界だ。死後の世界と現実の世界の交錯。ここに来て、ワレルカも自分が死んでいることに気づいたようだ。だから「もう消えるよ」などといって映画は幕を閉める。

これにてワレルカの話はおしまい。カネフスキー監督が映画を作らないのは、もう続きがないからなのかもしれない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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