はるか昔「エーミールと探偵たち」を読んだ頃、大人に相談せず子供だけでスリを追い詰める少年たちに疑問なく共感してました。

この映画、何でも良いから早く大人に相談しろよ、あんなにお腹が膨らんじゃって家族よ気づけよ、などと内心連呼の嵐。オトナは例外なくそう思うだろうから、それは前提として、その先を問う映画なのだろう。 そうしてみると映画の小学生たちは”オトナはそう思うに違いない”→”だから相談しない”と。オトナは見透かされて、連絡路は断たれている。 子供たちだけでの出産後、何故か教師たちが謝罪会見を開く。責任取れとまでは思わずとも、何で周囲のオトナが気づかなかったのか責めたい気持ちは湧いてくるから、責め側でいることでは大差ない。

周産期の部分のみをみると、子供たちにとっては生命誕生を深刻に体験する機会になったろう。それに比較して若手教師の麻生久美子が事前に強行していた性教育はトンチンカンだけれど、かといってそれをクサした大人たちも無策であることには大差ない。 また事後の対応についても、オトナたちはベストの方策を皆で論じることすらできなかった。コドモの予想通りだったのだ。

ほとんどのファンタジーは新ルールの設定で想像世界を広げるものだけど、このファンタジーは想像範囲をどんどん縛る。その分見ていてキツいのだけど、そのキツさの中で、実は無駄だったり害悪だったりの思い込みに気づくこともありそう。

実際には少し上の年齢層で、オトナに相談できず、悲劇となる出産はあるわけだし。「誰も知らない」との比較も面白い。

子供たち、演技上手いねえ。上手すぎてハナにつくところもあるけど、まあ感心。