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[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)

愛のむきだし』を軽く越えていって、『母なる証明』を見終わった後と同じくらいの幸福感に浸れた。傑作。
モロッコ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







園子温の映画を観ると、オーケストラを思い出す。 様々な要素が絡み合いまくっていて時間は取るのだけども全ておさまりよく作られているから全く飽きない。中だるみしない。監督の言いたいことの軸が強く定められているからなのか、ワーっと色々なことが起こっても混乱しない。全ての音が調和して聴こえてくるから心地良い。

性的なシーンが多数あるけれど、ほどよく興奮させながらも物語のなかで目立つことなく自然なトーンにおさえられていることが素晴らしいと思った。美化、神聖化されていない性だけれどもどこか生々しくもない不思議。

オーケストラがクライマックスで全力出して演奏してる感じ(盛り上がりどころ)が分かるところも良い。それで結局何も出し惜しみせずワーワーっと全力出し切って終わる。あーすっきりした! どうだまいったか! みたいな顔が目に浮かぶ、そういう映画だ。だから物語の重さをたちまち軽くするし、そのギャップがまた魅力となったりもする。 人間を描こうと思ったらこうでなくっちゃ、と心底思った。 韓国映画に感じられる"痛々しくて強くて美しい乱暴さ"みたいなのが日本映画でも観られるのだと思うだけで私は安堵できた。園子温が生きている時代に生まれてよかった、とさえ思った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)chokobo[*]

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