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[コメント] ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001/日)

原点回帰
Bunge

USAゴジラ否定。それに「山越しにちらりとのぞく首から上だけのゴジラ」の画は一作目のファンにはたまらないのではないだろうか。一作目に対するリスペクトが感じられる。

それでいて現代向けに翻訳しようとする姿勢はゴジラを「戦没者の怨念の集合体」というわかりやすい一言で評していることから伺われる。一作目が作られた1954から半世紀近く経って作られた作品なのだから、ピンとこない若者が大勢いて当然だ。これくらいの説明はあってしかるべきだと思う。

そこまでは好感が持てたのだが、他はどうかと思う点も。

ヒロインはじっくりと描かれている。仕事に対しあれだけの情熱を持っているという設定も、あの父親ありきなのでよくわかる。感情移入できる人物なのだが、クライマックスにおける行動は物足りない。あれだけの尺を割いただけの展開がない。この映画では彼女と父親の関係が主に描かれている。ところが娘に比べ父親の描き方が足らない。宇崎の熱演は素晴らしいのだが、内容としては「職務に忠実な人間」で片付けられる人物であり深みが感じられないのだ。そこがラストで広がるべき余韻の無さに繋がっている。

そして非常に低予算であると感じた。映像や演出は明るくウルトラマンのようであり、子供向けという印象だ。その明るい雰囲気の下、緊張感のかけらもない愚かな民衆が無情に蹴散らされ、きのこ雲が立ち込める。ミスマッチがもたらした不気味さを醸し出す。一作目とはまた違ったニュアンスの恐怖感が生むことに成功した。この映画の価値はそこにあると思っている。

原点回帰という点にはあまり良い印象は無い。今の時代は1954年とは全く違う。米軍を無視して自衛隊の活躍を描くというのは無理があるのではないか。単純なエンターテイメント作品ならまだしも、原点回帰するならそこまで踏み込むべきだろうと思うのだ。多少お茶をにごしたような展開でも良いと思う。例えば「日米が協力してゴジラを圧倒する。ところがあと一歩でゴジラを倒せるというところでアメリカにGODZILLAが出現。GODZILLAからアメリカを守るため、日本に駐留している米軍がすたこらさっさと本国に撤退した。さあどうする自衛隊?」 このような陳腐な展開でも、米軍を描かないよりかは良いのではないかというのが私の見解だ。この展開にすることでわたしが全てのゴジラシリーズに感じていた「自衛隊がやられても他国の軍隊がやっつけるんじゃ?」という疑問、最大の危機感の欠如が埋められると思うのだ。

キングギドラやバラゴンなどはモスラもどきであり、頭数を増やしただけで、登場しなくて良いはず。結果としてモスラ対ゴジラに色々つけたした作品、という印象だ。

(評価:★3)

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