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[コメント] 愛情の決算(1956/日)

ロマンスに時間かけ過ぎ、自分の出番が少な過ぎるだろう佐分利信八千草薫の浮浪児の造形は傑作、彼女で一本観たかった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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三角関係もので、原節子三船敏郎は類型的。作品の興味はもっぱら、妻を奪われる佐分利信の詠嘆に係るものになる処だが、これが今ひとつこちらに響いてこない。そもそも中盤に佐分利の出番が少ない。まるでプロ野球の監督兼選手がいらぬ遠慮をして、選手として出場するのを過度に控えているみたいなのだ。原・三船を立て過ぎ、ふたりのありふれた描写が多過ぎる。原が前夫とその息子への愛着をほとんど示さないのも食い足りない。

印象に残るのは失業した佐分利が勤めに出る原の靴を欠伸しながら磨いている件。ここなどキメのショットを斜め構図のアップにする処はサイレント映画の影響が窺えて愉しい。原に風呂場からホースの水引っかける激情もすごい。しかし、ここから諦念へと向かう心理の積み重ねが不足していると思う。あと、千葉一郎浜田百合子の押しかけ家族との関係も、もっと膨らませればいいものになっただろうに。

米軍描写や飾られる鉄兜も突っ込み足りずに終わった。かつての部下の出世を眺める上官の複雑はさすが佐分利、印象に残るだけに惜しい。本人の出番増やしてロマンスを減らし、70分を90分にすればいい作品になっただろうと思う。

(評価:★3)

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