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[コメント] 告訴せず(1975/日)

太占で小豆相場でモーテル買って左団扇という高度経済成長のコバン鮫商法の疑似体験
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作の美点は太占(ふとまに)なる鹿の骨焼いたヒビでの占いと、小豆(しょうず)相場の薀蓄。これ組み合わせて濡れ手に粟という展開は、実に下らないなりに面白い。青島幸雄はカッパノベルズで梶山季之読んでいるが、そこにこの手法が書いてあるということなんだろうか。その他、選挙における三千万円の実弾戦発言(小沢栄太郎の事務所が三千六百万円の領収書を求めるのがすごい)から始まる、ある処にはあるあぶく銭の話はメモに値する。

しかし後半のまとめは駆け足で貧しいだろう。DVDに監督インタヴュー(2007年)がついていたのだが、最後にとつぜん出てきて江波を平手打ちする男の件、「あれ、俺の計算違いなの」、前振りを丁寧にするのを忘れていたと告白しているのだった。それでGOサインが出ちゃう制作状況は貧しいだろう。東宝映画は風前の灯の感想が残る。

色々詰め込み過ぎとしか思えぬ作劇で、90分はいかにも尺足らずと私など思って観ていたのだが、監督はモーテルの火事以降がダレている、長すぎた、と指摘していて驚いた(なお、同インタヴューによると『黒い画集』は贅沢にもラストを三度撮り直したらしい。監督の回想は本作への遠回しの嫌味に聞こえた)。真面目な青島は小沢昭一似だが何もできなかった印象。私的ベストショットは東京へ出た青島がストリップ小屋で西村晃と再会する衝撃のシーン。

(評価:★3)

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