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[コメント] タルチュフ(1926/独)

複雑な現実を一方的な視点から裁断しており浅墓な印象。美術は素晴らしく、グロテスクに大きな呼び鈴のベルがいかにもサイレント映画の小物で異常に印象に残る。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「この世に偽善者の何と多いことか。しかも千差万別」と字幕で始まり、家政婦が描写される。金持ちの老人を舌出しながら介護し、遺産は家政婦に相続させるとの公証人への手紙を書かせるのに成功したその時、役者になった孫が帰還し、彼をぐうたらと嫌う祖父に家政婦の悪事を気づかせようと、キャメラ目線で観客に訴える「僕は諦めません」。

翌日に部屋に乱入して映画を上映。道化の格好でリアカーに機材乗せた巡回映画館。「タルティッフあるいはオルゴン氏の愉快な友人」。オルゴン氏は宮殿へ帰還するが、旅先で入れ上げた宗教の師タルティッフを帯同。師は贅沢品を宮殿から捨てさせ、召使は全員馘になる。しかし師は大食いで喜捨の受領に余念がない。これは洗脳よと妻は侍女と一緒に抵抗を試み、師に酒呑ませて色仕掛けすると師は妻を襲う。夫は鍵穴からこれ見て覚醒。ヤニングスは老人役が有名で、中年の役は初めての体験。タルティッフ造形はまるで水木しげるの妖怪のようだ。上着を開けると前科者の刻印が露わになる、というキメのショットが古色蒼然としている。

入れ子構造から戻り、家政婦は化けの皮が剥げて巡回映画館についてきた子供たちに笑われながら退散、このショットも残酷なものだ。「偽善者に気をつけよう」と警告を発して映画は終わるが、裏付けもなく追い出した家政婦がもし真面な人だったらどうするのだろうと思われた。公開時の邦題は『タルテェッフ』らしい。

(評価:★3)

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