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[コメント] あゝ同期の桜(1967/日)

最良の特攻「批判」映画であり中島貞夫の秀作。極限のリアリズムは『永遠の0』のような国体擁護のメロドラマと対極にある。「この瞬間 彼等はまだ生きていた」。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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昭和18年12月10日舞鶴海兵団、二等水兵、山本麟一のシゴキ。19年2月1日土浦海軍航空隊、海軍士官「お前たちはみんな死んでもらう」。千葉真一に届くラブレターは昨今の個人情報保護法みたいなのり弁。「海軍だけはもっと合理的かと思っていたよ」という雑談があるが陸軍は不合理というのは前提にされていたらしい。柄本兄弟みたいな若き蟹江敬三が印象的。

昭和19年6月 出水海軍航空隊、9月 宇佐海軍航空隊。特撮は面白くない。松方弘樹がエンジン不調で不時着する件(「片翼を樹にぶつけろ」と後ろに座っていた指導教官高倉健)もイマイチ撮れていないが、とても印象的な件。片目で再登場する健さんはドスが効いている。

昭和20年、少尉。特攻。鶴田浩二の大尉の教練「貴様たちは消耗品なのだ」。特に美しい言葉も云わず脇役の鶴田は、だからこそ訴えかけてくるものがあった。最後の休暇。夏八木勲が窓から見る傾斜面に咲いた白い花がとても印象的だ。映画は佐久間良子藤純子(及び三益愛子)でもって、こんないい女を捨てて行く不幸を切々と謳っている。「学問がしたい」という戦死者村井国夫の日記が朗読される。

4月串良基地。帰還した夏八木を「逃げてきたんだ」「すでに名簿から抹殺されている」という水木しげるのような展開。特攻モノにこれは多い。鶴田と健さんのタメグチ対話は珍しい。特攻映画御馴染みの前夜の無礼講はあるが殆ど描かれず、千葉真一が娼婦に神様みたいと云われて爆笑している。兵学校から脱走した金光満樹が整備兵になっていて再会するが、殴られ通しで精神を犯されていたという激しい件もある。

最後の夏八木の離陸失敗の爆破死、助手席の兵隊を降ろしての死であるから、これは抗議の自死なのだろう。特攻機の殆どが撃たれて海に落ちる映像が繰り返され、「この瞬間 彼等はまだ生きていた」と字幕が出て終わる。この怒りのこもったストップモーションはとても印象的。

学徒兵の手記が原作でシビアな内容。この原作は小泉純一郎の愛読書らしいが、なぜこれ読んで靖国神社に参拝するのかよく判らない。

(評価:★4)

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