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[コメント] 酔っぱらい天国(1962/日)

序盤の破天荒な喜劇が抜群、この調子で最後まで続ければ傑作なのに、まあいらない展開を持ち込むものだ。脚本以外は俳優も撮影も最後まで極上。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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松山善三のテーマ主義、ここでは酒のうえでの犯罪は許されるかを取り扱っている訳だが、これがどうにも上手くいっていない。だいたい津川雅彦が無罪放免になる訳がなく、有名人なら当然にマスコミ等からも社会的制裁が加えられるはずだ。だから、津川が無罪なのになぜ俺だけが、という笠智衆の立場には説得力を欠いている。プロ野球への無知(完全試合した投手が翌日投げる訳がない等)も、練られていないホンだなあという感想に輪をかけてくる。

後味の悪い映画はむしろ好みなのだが、これではどうも仕方がない。雌犬呼ばわりされる倍賞千恵子(とんでもない放送禁止用語付)の造形も、彼女の事情について呑みこませてくれない。いや、こういう女もいるのだろうが、何で彼女はこうなった、を示すのが脚本家の腕の見せ所だとすれば、これでは失敗している。親爺が変な奴だからどうだというのだろう。

こんな展開は止めにして、線路で管を巻く伴淳三郎や亭主に対抗して昼間から呑んでいる岩崎加根子、格好いい有馬稲子、そして何より箆棒な怪演をみせる笠智衆と三井弘次を、最後まで適当に酔っぱらわせて夜の街を集団で徘徊させ続ければ、とてつもなくナンセンスな傑作になっただろう。この方が決まり切った起承転結などよりよほど面白いと思わされる。あるいは、序盤が面白過ぎたためにバランスを欠いた、とも云えるのだろうか。

(評価:★3)

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