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[コメント] 喜劇 初詣列車(1968/日)

最終作。同時代のフーテン描写サイケ描写が穿っていて阿呆らしくも愉しいのだが、辛気臭い保守的なまとめ方との落差で損しているだろう。ピンキー・チックスの演奏付。64年の新潟地震が背景になっている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







佐久間の弟小松方正を求めて渥美清は68年の風俗巡り。財津一郎の前衛絵画のボディペインティングとか大泉滉の前衛音楽のいろんなパーカッションとか。新宿西口のフーテン族が描写されていて、通気口脇の芝生でごろ寝したりお姉さんが裸足で歩いている。こういうのはATGのそれ自体が芸術している映画より、こういう喜劇で観た方が判りやすいところがある。

小松は長髪に鬚でロック喫茶で踊っているところを発見される。小松「芝生に寝転んで星空を見てごらんよ。フーテンの良さが判るよ」渥美「しかしフーテンじゃ喰っていけねえだろう」小松「それが喰っていけるから堪んねえんだよ。要は勇気の問題よ」で食い逃げする。小松はハナ肇の付き人兼運転手時代の出演。本作では二枚目役で、女に貢がせていると告白させ、あろうことか城野ゆきと一緒になっている。オープニングクレジットは後の方にある。

渥美はフーテン喫茶でミニタリールックに長髪になって、スリク呑まないと云われてハイミナールだかをぼりぼり齧って徐々に呂律が回らなくなっている。登場するバンドはピンキー・チックス。このフーテンのなかには青山ミチ紅千登世が混じっている由。

楠トシエは今度は西村晃の妻。西村と再会する若水ヤエ子はさすがのギャグを振りまく。肥った轟夕起子みたいだ。弟の川崎敬三が若水を渥美の浮気相手と間違えて撮った写真を楠に見られて混乱になり、そこにラリった川崎に次いで佐久間までが参入してさらに混乱が度を増している。たいへん芳しい。

しかし、フーテン族が真面目になって伊勢詣での初詣列車、双子岩に手を合わせる小松と城野という保守的な纏め方は詰まらない。渥美が佐久間に迫られる妄想というギャグは今回は最後にとってつけたようでこれも詰まらない。シリーズ延長ならず定番になり損ねた。

スキー列車ってのは混んだなあ。私もこの映画の描写のようにずっと立っていたものだった。今でもあんななのだろうか。越後湯沢辺りのスキー場と新潟に「東映ホテル」が映るが本物の宣伝だろうか。コンセントにプラグを差そうとすると火花が散って、ショートした、ヒューズはありますかという会話が時代。佐久間は、震災で両親と兄を失ったと語っている。これは1964年の新潟地震のことなのだろう。

(評価:★3)

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