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[コメント] 忘れられた子等(1949/日)

特殊支援に携わる先生方に是非観てほしい秀作。本作には得難いユーモアがあり、共生の温もりがある。これを理想にしなければ世の中真っ暗闇だと思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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初期の特殊支援学級を記録してとても優れている。次第に児童との距離を縮める堀雄二の先生は定型の造形であるが、この場合定型が優れているのだ。序盤、児童らを放り出して絵ばかり画いている。親も児童をホッタラカシだ。それがアリの世の中だったのだ(本作の前年に児童福祉法施行、聖戦薄弱児施設が規定)。

本作のユーモアは理想だ、現場はもっとハードだ、という反論が予想されるのだろう(もちろん知的障碍の度合いも様々だろう)。『学校?』はもっとハードだった。社会進出についての堀雄二の得意を伸ばせぬものかという理想は洗濯工場で破産するのだろうか。私は精神科病院廃絶を扱った『人生、ここにあり!』も想起した。イタリアにあって日本に欠けているのは、彼等を見守る行政機関と地域社会だと強く思った。

ぽつねんと集団から離れる子供、すぐ地べたに座り込む子供がリアル。すぐに殴りかかる子供や、車のことばかり質問する子供、やたら高い処に登りたがる子供もリアルだ。その子がポールに登って降りられなくなる件がベストショット(ハシゴ車がすでにあったのだ)。あと、俺は校長だと女子児童を騙す村田宏寿が、後刻この児童に校長先生遊ぼうと人前で恥をかかされる件は秀逸。因果は巡るのだった。ラストの演奏も美しい。これが拍手喝采の本番でなく、リハで終わるのがとてもいい。『手をつなぐ子等』(昭和12年の設定)で先生だった笠智衆が見守る校長という配役も良かった。

(評価:★5)

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