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[コメント] 女と男のいる舗道(1962/仏)

ジャンヌ・ダルクと娼婦の先鋭的な対照。『裁かるるジャンヌ』の「死が救済」に向けたB級映画の描く運命は余りにも儚い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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手の尺で身長測り、ビリアード場で陽気に踊り、路上で見回りの刑事をあしらうアンナ・カリーナ。厚化粧も演出なのだろう、『はなればなれに』よりも老けて見え、哀れが醸し出されている。娼婦とかそういうものだろう。ダンスも誰も相手にしていないし。相手がいないのに踊り続けるのがひとつの倫理と云うかのようだ。

極めてステディなモノクロ・スタンダード映画だが、人物の後頭部を延々捉え続けるショットに『ありきたりの映画』に至る反映画の志向もすでに含まれている。娼婦は保健カードの保有と診察を義務付けられる、とは本邦赤線の鑑札制度と同じ。ルグランのマイナーなワルツがとても美しい。ビリアード場での子供が風船膨らます形態模写は抜群。ゴダールの断片ギャグは大道芸風のものが多数を占める。

カフェで哲学者は言葉=真実を解き、アンナの「言葉なしで生きられたらいいのに」と対立する。朗読されるポー「楕円形の肖像」は肖像画を美しく描き上げた直後にモデルの妻が死ぬ話。車に乗る。車窓に『突然炎のごとく』と「地獄有限会社」、金が先か女が先か。そしてB級映画の銃殺。フランスを救済したジャンヌ・ダルクの死と比較されている。忘れ難い裏路地の光景が心に刻まれる。

(評価:★5)

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