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[コメント] ずべ公番長 夢は夜ひらく(1970/日)

やくざ映画とスケバン映画の端境期らしい混交物だが、世代間を繋ぐ女子少年院同窓生という設定に意外なリアリティーがあるのが美点。世の中どこを向いても学閥で回っているものなのだった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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女子少年院(世間では女ネリカンと呼ぶと云われる)卒業生大信田礼子の更生先(紹介制)はクリーニング屋。園佳代子には紛失品の窃盗の濡れ衣を着せられ、南利明(いいギャグ飛ばしている)には夜這いされて、夫婦喧嘩になり逃げ出す。この展開は田中絹代『女ばかりの夜』と似ている。原知佐子は中北千枝子に嫌われて腹いせに桂小金治に色仕掛けをして夫婦喧嘩させ、施設に戻る。

本作が絹代作と大いに違うのはその後の展開で、宮園純子がママのキャッチバーに勤めるのだが、ここにいるのは女子少年院の同窓生ばかり。卒業生同士がアジールを作っており、他の女子少年院との対立関係も描かれる。卒業生たちの繋がりは人情によるもので、宮園は店員らの失策の穴埋めをして店を手放し最後は討ち入り。このような処への就職を絹代作の舎監アワシマは更生とは認めないだろう。そしてアワシマは院生の更生に失敗し続ける。二作併せて、世のつくりを反対側から見せられた具合だ。

前半は大信田の竹を割ったようなキャラが爽快でとてもいい。しかし後半、突然に賀川雪絵とヤク中五十嵐純子の姉妹愛で幼児期回想のベタが走り出す辺り、鈴木則文の影響強いのだろう。禿げアタマでもって変態キャラの彫琢著しい金子信雄へ大信田が借金返済のため体を与えるような展開も辛気臭くなった。

宮園純子と梅宮辰夫に歌の客演藤純子(タイトル曲ではなく、よりやくざ映画っぽい「命預けます」を唄う)とは『夜の歌謡曲シリーズ』の布陣。定型の討ち入り乱闘が閉店後のパチンコ屋というのが愉しく(椅子がないが、閉店後は片付けるのだろうか)、ベースソロの劇伴が格好いい。ここはもうシリアスになっているのに、左とん平が再登場してギャグをかます辺りも則文調。

藤純子の他にも、ゴールデンハーフが「黄色いサクランボ」を唄っている。タイトルバックのバレーの試合でボールを蹴飛ばすショットと、左とん平にナンパされて大信田「その面味噌汁で洗っといで」がウケた。新宿ではヒッピーがシンナー吸っていて、オデオン座など当時の映画館が映され、『昭和残侠伝』の看板が掲げられているが、権利関係かスタッフ名が偽名(監督 山田宏次)になっている。佐々木梨里は余り活躍せず残念。パンチラ披露の悪役夏純子がハマり役。何で「ミラノのお春」と呼ばれるのか謎のまま終わってしまった。

(評価:★3)

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