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[コメント] 桜田門外ノ変(2010/日)

どの視点から観るべき映画なのか判らなかった。尊王攘夷テロを同情的に描いて、それで何が云いたいのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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井伊直弼中老(伊武雅人)、アメリカと和親条約を朝廷勅許待たずに締結。朝廷立腹、武家伝奏、幕府を飛び越えて水戸藩に勅書、「幕府を諫めよとのお上の大御心」。水戸藩の若い面々これで舞い上がりテロに突き進む。水戸の徳川斉昭(北大路欣也)は止めるが西郷隆盛(永澤俊矢)が協力を申し出て煽り立てる。勅書は「九条関白殿の署名がない」偽物、返納せよと井伊。そして安政の大獄、斉昭も蟄居命じられるが、一貫して「太平天国の乱で喜んだのは英仏、ここで水戸が幕府と喧嘩して喜ぶのも英仏」と斉昭。ペリー来航。幕府、斉昭を海防参与に任命、攘夷論主張して辞任。井伊直弼大老に。通商条約。

「専横を断たねば」テロ指示する柄本明は元水戸藩郡奉行。3月3日決行、節句で大名は総登城。突撃予定18名、脱藩届。雪上のテロはやたら盛り上がる。なんで井伊側の行列の者たちは雪なのに半ズボンなのだろう。雪に血みどろの時代劇、自害の痛々しさ。

開巻30分ぐらいでこのように桜田事変までが描写され、それから40分は回想、そこから戻って後半はそれ以降の描写になり、テロ失敗の逃亡生活になる時間配分。薩摩藩で京都制圧、朝廷を幕府から守るのが最終の目標。暗殺の後は京へ、なのに京には兵隊おらず。「読み誤ったのじゃ」と唸る柄本はさすがの演技。ここから全国を逃げ回り捕えられる元水戸藩士たちの描写が続くことになる。

この敗走を後半に持ってきたのはとても興味深いのだが、あんまり盛り上がらなかった。最後に参加した温水洋一が突然に十二使徒のように泣いても薄い。北大路欣也がウンコ声で唸りまくるばかり。大沢たかおは浅草に潜伏、匿う中村ゆりがいい。折檻されるのが可哀想。妻の長谷川京子は印象に残らず。

明治元年の笛太鼓伴奏の天皇江戸城入城、西郷隆盛が「ここからでごあす、あっちゅう間でした」と語って終わるが、お前が裏切ったんじゃないのかと思わせられるのは舌足らずな映画の瑕疵だろう。結局、映画は老中に乗っ取られた江戸幕府を批判し、水戸のテロリズムに共感を示している。この辺の歴史には暗いのだが、これでは攘夷も賛成するのか、226もついでに共感しているのだろうかと邪推させられるところ。桜田門外の変は『侍ニッポン』を原作に、伊藤大輔らを監督に何度も映画化されている。そちらが観てみたい。

(評価:★3)

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