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[コメント] 母娘監禁 牝(1987/日)

プッツン家出少女とバカ男とのあれこれはバカバカしくも面白く、お互い世の中に無知すぎるのが何とも云えない世界。エロ劇画好みの収束はやり過ぎで私にはトゥーマッチであった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







女子高生三人がテトラポットで死のうと約束しながら、ウォークマンのイヤホン回し聴く「ひこうき雲」。ユーミンは荒井由実時代には結核少女と呼ばれた人で、この三人もそんなものだろう。

集合時間に間に合わずひとりだけ飛び降り自殺して、前川麻子は自分も死んだことにしたのだろう、家出してテレクラで知り合った加藤善博と同棲。安普請の半畳ほどの小部屋が並ぶテレクラは初めて見て面白かった。友人追って死のうかと思ってと云う前川に加藤は「そういうのプッツンって云うんだ」と懐かしいフレーズを口にする。岡田有希子(前年死亡)の名前も出て来る。

無職の加藤はオンナを連れに売り飛ばして小遣い稼ぎ(ひとり三万円というセコさ)している。シンナー遊びしている少女を連れに売り渡して、当人も前川とラブホで4P。しかし加藤は前川を意外に大事にしているという、グダグダの関係にいいものがあった。「もう家帰れよ」「だって金ないし」で甲斐甲斐しく弁当屋でバイトしている哀れ。

結局生活は当たり前のようにドン詰まり、前川は三人組のもうひとりを騙してお小遣い稼ぎ。「一生忘れないからね」と云われて「もう死んだのよ、あんたもアタシも」という主題の再浮上は結核系だがヤケッパチなのは判る。しかし、前川の母親が同棲先に迎えに来て、何だかんだで彼女が強姦され、それを娘が背中で聞いて冷蔵庫に隠れて涙を流す。母娘はさばさばしたように一緒に家に帰るという収束は好きではない。

母のオンナを見つける娘という主題は中沢けい「海を感じる時」(78)という傑作があり(映画は別物)、その変奏でエロ小説でも母娘監禁SMみたいなのを読んだことがあるが、まあやり過ぎとしか思われず、本作もその類に見えた。笑って泣ける絵沢萌子の仕方ないお母さんものならいいのだが本作の母はシリアス過ぎる。だいたい、同棲させてやった、娘は自殺幇助だろと居丈高に出られてスミマセンと体許す母というのもどうかしているし。

前田麻子の父は国鉄マンで仕事は塗り絵をさせられている。妻は国労にいると新会社に残れないと云い、父は女は黙っていろと怒る。87年は国鉄分割・民営化によるJR移行の年。本筋はエロ小説好みの転落ものだが、この背景が倍音を奏でていると考えると意味深なものがある。ただの結核少女ではなく、主人公にも塗り絵をさせて倍音を具体化させると面白かったと思うが。原作は映画化作品の多い西村望の「紡がれる」。

(評価:★3)

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