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[コメント] 歌女おぼえ書(1941/日)

時代を反映した空疎な教訓劇。見処は河村黎吉の意地悪爺さん。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







役者の年齢には寛容なつもりだが本作の水谷八重子(初代)は当時36歳、25歳を演じるのはいかにも無理がある。冒頭のワンカットの舞踊は素晴らしいが、その他は演技自体もどうかという出来。舞台ではない映画だということで表現を控え目にし過ぎたのではないのだろうか。

歌女の造形もいい加減に感じる。あの暖簾立て直しの術は誰しも見事と膝を打つものだが、どうしてその方面の教養のない旅芸人の彼女にそれができたのか、皆目判らない。成功を間近に身を引くのも唐突、上原謙の許嫁への配慮なのだろうがどこにも説明がないため、ラストの科白でやっと判るだけで、それが本心だったのかも不明だ。観たい処が全然描かれていない。

その他例えば、子供たちに甘酒を振る舞う件、子供たちに魅力が全然ないのは驚きだ。清水の得意技が何も出てこない。随分投げやりに撮ったなあという印象。結果、不良でも努力すれば真っ当に生きられますという、官製教科書好みの教訓劇以上のものが何も感じられなかった。

(評価:★2)

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