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[コメント] 劇映画 沖縄(1970/日)

沖縄の切実を記録して貴重。生真面目になりそうな主題を地井武男の刹那的変遷で巧みに語っている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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地井や佐々木愛の裏商売が興味深く、同時にアブれもの稼業の悲哀を十全に物語っている。演習地に入って銃弾盗むとはアパッチ族みたいだ。連中、飛行機が飛ぶたびに危ないからと伏せていて、何しているんだろうと思っていたら爆弾が落ちて吃驚させられる。実演地なのだ。飯田蝶子はリアルにに老いぼれていたのだろう、その彼女が撃たれて死ぬ件が無惨。兵器工場の詳述もいい。芯抜いちゃった爆発するぞの件など、さもあらんという恐ろしさがある。こういう細部が映画を豊かにしている。

加藤嘉戸浦六宏のフィクサー振りは堂に入っており、ウチナンチューの分断を語って生々しい。基地労働者4万人とある。他の連中はスト止めたぞと噂を流すスト潰しの一件などリアル。このストライキ、実話なのか、理想像を描いているのか。いずれにしても現代まで続く切実さが感じられた。三線の演奏による路上ライブが心に残る。沖縄語が少ないのが本作の難だが、ここだけはいい歌が聴けた。

名優潤沢だが特に前半を締める中村翫右衛門のリーダーがとてもいい。トニー和田のハーフは好演(佐々木すみ江の母親もいい)だが、彼の轢き逃げの件は唐突で、米軍の傍聴人のない裁判を描きたかったのだろうが無理矢理感があり蛇足ぎみになっちゃっていて残念。

(評価:★4)

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