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[コメント] 愛國の花(1942/日)

日本的な集団主義のなかでいかに戦争参加の主体は立ち上るかが、見合いの風習をトレースして語られている、と見ればとても興味深い美談版『赤い天使
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「心が決まらないから決めてください」と板挟みの三村秀子若水絹子に迫るのだが、この主体性のなさは求婚にあたって関操の父親頼みの木暮実千代も共有しているのだ。ここから木暮の「人のために働きたいの」は小さな一歩に過ぎない。彼女は社会によって心を決めて貰ったのだった。

それが赤十字の救護看護婦なのは穏健だが、一方こんな簡単に看護婦になれるのかという根本的な疑問は解消されないし、佐野が眼疾から回復するハッピーエンドは国策映画の無理矢理でしかなかろう。

父と娘の心遣い、戦死した兄の欠落と友人との結婚話、とは時代のもので、我々はこれを簡単にオヅ的などと語ってしまうがそうではなく、オヅ的とはそこから脱線する処にあると捉えなければならないのではないだろうか。

邦画草創期の名優関操の演技がたっぷり愉しめるのが美点。彼の戦後の消息は不明らしい(Wiki)が、彼がどこかへ行ってしまう本作のへんちくりんな収束は奇妙な予見だったように見える。本作は情報局映画ではなく、冒頭に「一億の誠で包め兵の家」と書かれた半紙が示される。

(評価:★3)

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