コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] からたち日記(1959/日)

自伝が原作の女の半世紀で、元祖朝の連ドラな心に沁みる場面がテンコ盛り。高千穂ひづるの代表作だろう。いい映画を観せてもらった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







しかし最もすごいのは幼少期。彼女はほとんど人間扱いされていない。地主へ奉公に出され、名はなく、足袋がなく素足で過ごし、地面が凍り冷たいので交互に片足で立って子守していたから「つる」と呼ばれた。納屋の麻袋に入って寝た。栗の木に縛られて折檻された。知っているのは「ひもじいは辛い、人間はこわい」。「おしん」もここまでの強度はなかっただろう。

もちろん高千穂もいい。置屋で病気で寝込んで「どこが悪いの」「胸糞が悪いんだ」と喧嘩するかるた嫂さんの水原真知子。彼女に案内される秘密の隠れ家の大木。山形勲(東野英治郎の配役が交替した模様)の妾仲間の関千恵子がいい人なのも、朝鮮人殿山泰司の石鹸販売で「朝鮮人の色」とヤクザに絡まれるのもリアルだ。

自分の幸せ求めて田村高廣の諏訪へ戻るのも女性らしいんだろう。戦争での田村との行き違いの皮肉は、弱い心なら自分は二号になる運命なのだと確信させるのに十分だろう。酔っ払って道端に倒れて伊藤雄之助と出会うのも人生、麦踏みのラストもいい。切々としたいい作品だった。諏訪ほか各地の町並が美しい。原作は塩尻「芸者」。島倉は田村の妹で登場し、OPに歌も流れるが内容は関係ない。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。