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[コメント] 禍福(前篇・後篇)(1937/日)

これしきのメロドラマが受け入れられるほど、女性の地位は低かったということなんだろうか。「貴方は悪魔だわ。恐るべき色魔だわ」と云われて何の弁明もない高田稔とはいったい何なのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







戦前作にありがちな少女漫画趣味。大衆文学転向後の菊池寛ってそんなものだったらしい。2点で十分だが上記事情がイマイチ得心できないので貶すのはやめたい気分。

入江たか子とあれだけ誓いを立てておきながら「見合いだけの積りだった」と竹久千恵子になびく高田の心変わりが実にいい加減なのだが、彼はどこかで弁明をするのだろうと思って待っていたのに、ついに最後までマトモな理由は云われない。つまりは心変わりだったのだ。これではメロドラマにもなりゃしない。

そしてふたりの住まいに乗り込む入江も「復讐だ」と腹を明かすのだが一向に復讐らしくない。いや実際は鬼になると云ってもなれるもんじゃなかろうが、映画としては盛り上がりを欠き腰折れに終わってしまう。

父親の丸山定夫が息子の高田に借金の犠牲になるのをさも当然そうに話すのは、さすが旧民法下の家制度の父権はすごいものだと思わざるを得ない。個人的にはここが一番興味深かった。

未婚の母の主題は重たくてここが見処なのだが、入江の私生児では戸籍が得られないということなんだろうか。竹久が子供に貰って戸籍を入れて一段落、というラストもすごいものだ。一般的に妾の子などどうしていたのだろう。高田では妾の子など持てない、ということなんだろうか。

逢初夢子が近く結婚するにあたり「お片付きになるそうでおめでとうございます」と挨拶されるのにびっくり。片付くとはそんな意味なのか。汐見洋が上等な喫茶店の床に煙草を捨てるのにもびっくりさせられる。

若き北林谷栄はこれが映画デヴューらしく、清川玉枝の使用人というより妹のようで、ツーショットが余りにも似合っている。導入の小僧さんによる家の紹介は印象的。立派な遊園地はどこだろう。

(評価:★3)

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