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[コメント] すみだ川(1942/日)

伝説の井上金太郎作品、残念ながら見処は俳優単位に留まる。川崎弘子の凛とした造形が美しく、西村青児との対決が見せる。上原謙はやたら篠田三郎似。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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すでに40年代なのにずいぶん拙い作劇に思える。冒頭の上原謙坂本武の背景説明のための長すぎる科白は拙い。各シークエンス間で感情の流れが繋がらないのも初歩的に拙く、ダイジェスト版のようだ。あるいは本作、総集編なのかも知れないが確認できなかった。

鍵を持たない家の玄関口で座って上原の帰るのを待っていて、中で猫が鳴いていて魚が狙われている、という件など秀逸なのだが、その直前が駆け落ちの決心の涙のシーンだから調子が外れている。娘の油絵を椅子で隠してしまうキャメラアングルは意味が判らないし、藤野秀夫のお師匠さんも上手いとはいいかねる。文句ばっかりですな。

物語は娘を前に母と名乗れない川崎弘子の悲劇でよくある話だが当時30の川崎は明治15年から32年までを演じていい迫力がある。因縁の再会してしまった西村青児との目線の対決が白眉。あと、中盤で弾かれる琴が前衛的な演奏で聴かせるのが美点。上原謙が途中退場で戻ってこないのは潔くていい。

(評価:★3)

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