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[コメント] 泣き濡れた春の女よ(1933/日)

清水宏初のトーキーで、特徴的なあの、一聴素人臭い宙を飛び交うような会話がすでに展開されいる。この調子は『有りがたうさん』他で拡大され、オヅに多大な影響を与えることになるだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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岡田嘉子の昔話に大日方伝が全部「それから」で返答して生じるあの一定の調子。これは新派調とは全然違う、素人臭さを強調したものだ。清水は会話にリアリズムを求めなかった。舞台のような写実を崩すのが彼の方法だった。これもひとつの蒲田調なのだろう。比べれば現代映画は写実一辺倒で不自由に聞こえる。

描写は喧嘩の件で屋根から延々落ち続ける雪、最後にシルエットになったまま逃亡する大日方と千早晶子のショットがひどく印象に残る。炭鉱映画であり北海道のジプシー集めたシステムはリアルなのだろう。炭坑にジプシーはつきものだ。意地悪なだけではない大山健二の親分が印象に残る。

メロドラマは岡田が恋を諦めるありきたりの四角関係の悲恋だが、シリアスな背景がありきたりと云わせないものがある。岡田にほったらかしにされている娘の市村美津子が寂し気で心が痛む。冒頭に「津軽要塞司令部許可済」と字幕が出るのはロケの許可ということなんだろう。

(評価:★3)

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