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[コメント] 生きている人間旅行 ごぜ 盲目の女旅芸人(1972/日)

すでに引退された瞽女さんが10年振りに往時を再現されたドキュメント。「大きく泣く者は大きく笑う。見よ、我々はこのように笑うか」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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斎藤真一の絵画がフューチャーされる。昔、水上勉記念館で観て心惹かれた画だった。とても背の低い瞽女さんが三人、縦に並んで進む実写は絵画から出てきたようだ。氏の画が挿画として使用された『津軽じょんがら節』は本作の翌年の製作(氏は考証も担当しておられる)。

冒頭の小さな神社。「め」と画かれたお札が山のようにある。これがとても印象的。「ねじ式」のようだ。神仏に縋るしかなかった時代。盲目の娘は7歳で按摩か瞽女かを選ばされる。

杉本キクさんほか三人。ひとりが三味線弾き、三人で歌を和する。先頭を進むのは少しだけ見える方の由。10年振りの門付け再現。家の玄関から、中には入らず演奏して、米や粟を貰う。戦争中まではよく来られたと村人は語る。庄屋の瞽女宿。みんなの愉しみだった。「人の情けで生きてきた」と云われる。村々も貧しかった。

集まったのは老人ばかり。山椒大夫の親子行き別れが唄われ、「葛の葉別れ」が唄われる。みんな泣いている。そして陽気な唄になり、手拍子が起こり、踊りが始まる。戸浦六宏は語る。「大きく泣く者は大きく笑う。見よ、我々はこのように笑うか」

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