序盤で京を探偵して子供のあることを突き止め、独身の採用条件を誤魔化していると看護婦寮で告発されるも、夫とは死に判れて独身、子供を育てるため仕事が必要なのだと京が涙ながらに訴えると、みんな同情して規則を責めはじめる。この展開に、森の石松のような竹を割ったような気持ち良さがある。その他、看護師たちが集団ギャグで繋ぐとき、気持ちのいい演出が続く。

鶴田浩二が伴奏断った妹を詫びるとき、タケコはショパアンしか弾かないというのもいいギャグ。鶴田に誘われ困る京。子供があるからと観客は知っており、鶴田だけ知らない時間帯が続くのが上手い。この辺りも元祖を踏襲するのだろうが。子供が熱出して京都行きに間に合わない件はあっさりしていて、後追いで京が上洛して町を放浪し鶴田とすれ違いになるときに万城目の名曲が流れる。

鶴田を同居させた船越英二が京を冷たくあしらうのだが、この辺りから作劇は駆け足。船越はこの手落ちを結局弁明させてもらえず悪役で終わる。作曲した歌謡曲が一等当選大ヒットという展開は本作でも説得力がなく、舞台等でコロンビアのロゴが強調されるのはとても商売上手にしか見えなかった。クライマックスのホールでは別の新曲が唄われ、新曲をついでに売ろうとしたのだがとても地味に終わる。寅さんの都はるみの回を思い出さされた（あそこでも最後のホールではるみは新曲を唄って映画がシラケる）。