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[コメント] 女子大学生 私は勝負する(1959/日)

格好いい撮影美術でヌーヴェルヴァーグと同時代、乱痴気パーティが『甘い生活』(60)に先行していてすごいのだけど、作劇は女性の自立をどう扱っていいのか手探り状態。戦後世代の生態を年長者が無理矢理動機付けしようともがいているような作品。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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大陸間弾道弾、アメリカのアトラス(実戦配備が59年。なおソ連のICBM(スプートニク号に搭載。これは飯田蝶子主演の『家内安全』(58)で一家で平和に観察されている)は57年)が話題になっている。落ちる前にしたいことしないと損よ、というノリで若者たちはオープンカー走らせている(大学構内でゴムボール投げて当たった相手と友達になる、という気楽な件が面白い)。東京映画の太陽族映画への対抗企画の趣がある。太陽族はこんな小理屈は云わずにただ不良をしていたが、時代の気分は通底していたのだろうか。

この連中と原知佐子は考えが違う、というのが本作の趣旨なのだろう。原はナイフの決闘を受けなかった学生服の青年から始めて、その決闘相手のラッパ吹き川合伸旺、資産家の息子露口茂、実業家の三橋達也と、将来性のありそうな男に次々に乗り替えてゆく。原は優柔不断な学生服の男からペットの男に乗り換えて強姦され、強姦されてついていく女というこの時代のパターンを好ましくも踏襲せず、露口同棲し、親から勘当されて露口に金借りて(別れるときに壁にはりつけて返済する)彼の子供を堕して、設計のアルバイトはじめて高級アパートに住む社長の三橋に乗り換える。女子大学生はこのように常に男乗り替えながらしたたかに勝負する、という趣旨なのだろう。最後は彼に洋行への同伴を誘われるのに断るのは、今度は男なしに独立して勝負するということなのだろうか。そう解すれば判りやすいがそう解していいのかよく判らず弱い。

そこらじゅうでジャズが鳴っており、音源がほとんど示される。三橋のマンションで原がダンスする件など格好よく、数々のジャズ演奏も感じいい(演奏はマイルスに似すぎているが)。「エロス荘」なる看板のかかった洞窟、樽のうえでコーラ瓶回して当たった男女によるストリップ合戦。これが英題になっている。付近の海岸、三橋のボートに露口がボートで突撃する件は男根的な日活『狂った果実』(56)のパロディだろう。こちらは露口だけが岩に衝突して死亡。

三橋の高級マンションなのかアパートなのか、地上4階か5階ぐらいだが外階段で上がる仕組みで、昔の人はやはり脚が丈夫だったのだなあと思わされる。原はブルジョアねと云ってはしゃぎまくっている。ゴダール映画のようにジャズで格好よく踊り、美人なんだから利用しないといけないと興醒めなことを口走る。そんな具合に勝負する女子大学生なのだろう。よく判らない戦後世代の生態を年長の制作者が捉えようとしてもがいているように見えた。最後に三橋と原が語り合う建築現場は議事堂と皇居の間。ラストのふたりのオープンカーは九段下でレースして、靖国の鳥居が背景に写る。若き米倉斉加年がお姉言葉で愚連隊に参加している。

(評価:★3)

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