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[コメント] 続南の風(1942/日)

ハリウッドの日本人差別ネタを輸入してカンボジア人差別に充てた演出でノートリアスな喜劇。日本人も返す刀で斬られているが間違いなく顰蹙もの。戦後もバラエティ番組で幾らでも観られた本邦差別ネタの元祖なのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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南の風』(39)『南の風 瑞枝の巻』(42)と本作の3作があるが、本作は第2作目の続編らしく、冒頭に第1部(瑞枝の巻)の便概が付く。会社辞めた佐分利信(『自由学校』と同じではないか)に母葛城文子は薩摩武士の魂を教えようと伴って故郷鹿児島で斎藤達雄の教え乞うてチンプンカンプン。帰り道、シンガポールで知り合った笠智衆と12年振りの再会。お玉水戸光子の噂。笠はカンボジア人の斎藤達雄(2役)と懇意になり、彼から砂金の採掘権と引き換えに開祖は落胤した西郷隆盛のホンダイ教を日本で広めろと云われて佐分利その気になる。華族の出の佐分利と身分違いの恋をするおでん屋の娘瑞枝高峰三枝子はそんな話と一笑に付するも佐分利怒り、あの人も男だわと高峰は惚れ直したりする。

それで本作。特に示されないが第2部お玉の巻なんだろう。佐分利は家の全財産持って事業にかかるのだが、母は高峰の忠告聞いても天晴と云うばかり。佐分利は何万もカネ使って教会建てて西郷さんの肖像画掲げ教マントに羽根つき帽という祖のコスチューム身に着ける。笠は最近は仏印の情勢も好転していると砂金に意欲示している。

神戸港に出っ歯の斉藤と西郷似の横尾泥海男。挨拶寸前で水上警察に捕まるも宴席に登場。追って笠が来て出し抜けに佐分利に謝る。西郷の件はウソ、聞いたところ横尾は年齢合わない。斉藤「でも、神様のお告げアリマシタ」。天を仰ぐ佐分利に迷惑かけたと謝るも「神様とてもお喜びヨ」と出鱈目に祈るのだった。ふたりは佐分利に煙草貰って喜んでいる。採掘権はあげるけど砂金ない。「貴方も私と同じ。夢と本当を一緒にしてるヨ」。笠はマラリアに罹っていたと指摘されている。まあ、どっちもどっちという話。

せっかく、南からお客様だからと、懐寂しい斉藤に札渡し、横尾にはいらなくなった新興宗教のメダルあげる。ふたりは終始卑屈に笑い、佐分利は爽やかに諦める。鼾かくふたりからパンダウンして豚の線香置き。この手のヘンな外国人差別ネタは、20世紀中は戦後もたくさんあったものだ。

後はまあ、傷心の佐分利・笠が天草は富岡旅して当然のように水戸光子を発見。乗っていた馬車置き去りに彼女の洋館。片思いの笠は水戸が仏人の亭主持って失くしたと聞いて佐分利は笠を勧めようとするが、水戸は佐分利が好きだったと泣かれる佐分利笠は島を去る。南へ行こうと佐分利は笠に告げて、しかし関係者の予想は外国ではなく鹿児島県内の模様。高峰は佐分利を追うのだろうかというどうでもいい問いかけで映画は終わる。冒頭「兵の家護る銃後の隣保愛」。熊本憲兵隊ほか協力。

(評価:★2)

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