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[コメント] 慰めようのない者(2011/仏)

「レウコの対話」からの短編朗読で、オルフェの哀れな運命に係るブラック・ユーモア。冒頭、いつもの黒画面の音楽(シューマン)が始まるとすぐ終わる、という自己パロディからして独特なユーモア。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







男女ふたりの朗読。「いずれ私も冥府に戻るし、起きたことは起きる」「死者に接した私を信じろ、全ては取るに足りない」と男は云う。女は愛と祭りを語り「女のいない貴方には無理よ」と云う。これが「慰めようのない」ということだろう。単に巡礼者と女の対話だと聞いても、独身者には身に沁みる処がある。

この男はオルペウス(オルフェ)。妻を救わんと冥府に下り救出、しかし後ろを振り向くなという条件を破って振り返って失敗する。以降、彼は女が厭になり、オルペウス教を開く。輪廻転生を悲しみの輪とする教義で、ヒンドゥー教に似た処があるようだ。男はこれらを語り、女に批評させている。

この女は、いずれオルペウスを八つ裂きにするマイナス(狂乱する女)とのこと。ジョヴァンナ・ダッティは確かに大柄だ。ブラックである。

ショットは珍しく、等身大以外にバストへの寄りがある。ひとりずつ朗読していた男女はラストショットで同じベンチに、しかも背を向けるようにして座っていたと判明して犬が鳴く。この鳴き声は八つ裂きの予兆なのだろう。

(評価:★4)

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