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[コメント] 沈黙は金(1947/仏)

パリ市街はじめ全部セットの豪華美術が箆棒で、とりわけサイレント映画撮影所が興味津々。あそこで働きたくなること請け合いの愉しい作品。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







石畳の路上にメリーゴーランドがあるのがまず素敵で、並ぶ映画館は手回し映写技師とピアノの小母さんに加えてなんと弁士が喋くっており、活弁って日本だけじゃなかったのかと驚くことになる。客車が二階建て無蓋の馬車もすごい。フランソワ・ペリエのアパルトマン、深夜なのに路上で歌われる歌は『パリの屋根の下』が想起された。窓からの夜景がまた美しい。

そして小さな映画スタジオ(フォルチュナ撮影所と呼ばれる)の描写が素晴らしい。日光を求めたガラス張りで、日が翳ると撮影が中止になったりしている。トランプばかりしている連中、美術班は日夜大工仕事、パネルや足場が崩落するドタバタが二回、賑やかに繰り広げられる。

監督のモーリス・シュヴァリエは段取りに慣れ過ぎて全部お仕事モードで進めているのがリアルだ。残業もしたりしているが実務的。監督が演出や科白を、キャメラ回しながら声出して俳優に伝えるのは、サイレント時代は一般的だったのだろうか。余りそういう描写に出会ったことがないので驚いた。だってクレールだから本当だろう。考えてみれば全然平気なのだ。

物語は男女の三角関係もので、フランスは中年男と青年と若い娘の三角関係ものが本当に多い。本作も中年男の敗退に終わる妥当な結論。お互いの関係を知らない三人、シュヴァリエの教えた恋の教訓がペリエ→ダニー・ロバン→と旋回してシュヴァリエに戻ってくる可笑しさ。シュヴァリエには路上に口説くべき女性が幾らでもいるのだった。

ダニー・ロバンのボーとしている田舎娘の造形がいい。そして三人が主演女優、男優、監督になり、俳優ふたりが窓から飛び降りるクライマックスが素晴らしい。ロバンの父の道化師はMr.ビーンに似ている。

(評価:★4)

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