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[コメント] ひとつぶの涙(1973/日)

盲目でマッサージ学校に通う吉沢京子という設定だけで感動してしまった。やはり吉沢京子なのだ。当然満点。ベストショットは次のデートの約束にゲンマンねだる吉沢京子。千葉県知事は控え目な造形でたいへんよろしい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







桜田淳子の父親にタコ社長など配役の妙味も美点。まだ無名の水谷豊(テレビでブレイクは翌年)、すでに芸風は同じ。冒頭の二連続ペンキけ躓きひっくり返しのギャグが面白く、待ち伏せしていた森田健作への吉沢の図星「この前も待ち伏せしていたんでしょ」。賭け麻雀の現行犯逮捕は確かに珍しい光景。

孤児院出身の仲間三人はモノが無くなったりするとすぐ疑いの目で見られる。盗癖のあった水谷。心配する先生津島恵子。ペンキ屋辞めざるを得なくなった森田と屋台で出会った大村崑は青函トンネル工事(工事期間は61〜87年)の手配師。森田が孤児と知って「現場行ったらあんたみたいな境遇の人間、たくさん働いてるんやで」と励ます。 盲目もそうだが、孤児という設定も70年代の定番で、余りにも使われ過ぎたが当時は使われる必然性があったのだろう。家族愛ばかりの現代から見ると懐かしいように思われる。様変わりした故郷の漁港の思い出を語る吉沢に合わせて、何も変わっていないと嘘をつく森田。故郷喪失も定番で、この必然性はよく判る。

当時の映画は不思議と競技場の空のスタジアムがロケ地に選ばれる。開放されている施設が多かったということなんだろうか。そこで別れようと云う森田に、吉沢が手首の切り傷見せて「切ったんだけど、失敗しちゃった、目が見えないもんだから」「負けないで生きていこうと決心したときから、何でも見えるようになったのよ。こうだろうなって想像すると、心の目にそう見えちゃうの」無茶苦茶泣かせる。吉沢以外で泣けるかは判らない。

工事現場の事故で死にかけた森田は、角膜移植はアイバンクに登録しておいた死者からだけ、死後四時間後になされるという話を思い出して、吉沢への移植を頼む。吉沢がこれに強硬に抵抗して森田の回復を祈る。森田が「私の目になってくれる」。いいラストだった。

同年の『あこがれ』と同じ監督・脚本とは思えないいい作品。桜田は「花物語」を唄う。♪この花は私です。彼女だけ芸能ショーみたいな演出で愉しくて良かった。子供なのにこのキャメラ度胸、いい女優になれただろうに惜しい。

(評価:★5)

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