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[コメント] 陸軍中野学校(1966/日)

加東大介のアナーキーな理想は右旋回前の産経の体質を記録しており、特定秘密法絡みでも誠に興味深いの切り口なのだが、映画は増村の活劇好みが災いして大仰な法螺話めいている。リアリズムで観たかった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







生徒をほとんど誘拐して家族に何も知らせなかったのは事実なのだろうか。せめて戦死した位の嘘を伝えそうなものだ。特定秘密保護法ってのも同じような運用をするのだろうか。また、婚約の一方的な破棄は現在では罪に問われるはずだが、同法の下では免除されるのだろうか。

待田京介とは別に人事の職員がいたはずだが「タイピストも身元のしっかりした者ばかり」という実にいい加減な出鱈目は、陸軍では上官の命令として通用していたのだろうか。それとも活劇のための作り話なのだろうか。また、レーニンへのシンパシーは当時陸軍内に本当にあったのだろうか。運命のスパイ対決は別に悪くはないが、この特殊な史実について、細部にこだわりたい私のような客には、嘘も方便な活劇調は期待したものではなかった。

学校の講義に招待される手品師や泥棒の、実演の描写がないのがすごく貧しい。ここで驚かさずに何のための映画なのか。美点は許嫁を殺せと云われて特に葛藤もない市川雷蔵のニヒルな造形、実に不気味で、ザ・組織の人間という感じがする。それだけですか、という不満はもちろんあるが、90分映画ならまあここまでなのだろう。

(評価:★3)

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