コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 最高殊勲夫人(1959/日)

白坂の皮肉とはいつも通り反りが合わない。個人的な見処は美術とロケで、聖橋の下で市電と丸の内線が交差するなんて画はとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宮口精二のボロ会社がいい。ああいう建物に勤めたことがあるので懐かしい。何で女性社員は昼にメザシを焼いているのだろう。地下の食堂街のカウンターだけの昼食屋なんてのも懐かしい写実。

ラストでその宮口が繰上げ定年、娘を狙うテレビディレクターに再就職世話してもらって、娘を三度大会社に持っていかれて、ショボクレている図を映画は笑いものにする、なんてのはいかにも増村=白坂で、何が面白いのか私には見当もつかない。古いのはもういいよってなもんで、ホリエモン流に高度成長にどっぷり首まで使っていたのだろう。

丹阿弥谷津子のコメディもイマイチ。彼女を評して「学校の先生って三日やったらやめれないって云うしね」という科白があった。人の上に立つ快感を指すものだった。そういう人間の認識なのだ。しかし、学校の先生ってそんなものじゃない、もっと切迫した立場だと思う。ラストで若尾文子はこの最高殊勲夫人の立場の奪還を志す。それは冗談のようだが、彼女はこれを冗談と認識できず酔生夢死の人生を送るだろう。シニカルなものである。

テレビ本番のしゃっくりとか前衛書道とか、ギャグのいちいちがモッサい。市川崑のほうがずっと上手い。主演ふたりの結婚に向けて大量の男女が諦め続ける終盤は段取り通り進むだけで退屈なだけ。なかでは船越英二を誘惑する八潮悠子と秘書の小林勝彦が良かったが、見栄えのしない俳優が多すぎる。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。