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[コメント] 花を売る乙女(1972/朝鮮民主主義人民共和国)

可憐なホン・ヨンヒ(北朝鮮の紙幣のデザインになっているらしい)のアイドル映画。かの国もアイドルが好きなのだ。日韓の壁を崩したのが冬ソナだったのは記憶に新しいところで、日朝の壁もアイドル路線で崩せないものかと、半分真面目に思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







物語は昔の日本映画によくあった一家没落もののカーボンコピーだが、長旅を草履の数で簡潔に示すサイレント調はいい感じだし、夕暮れ時に丘で姉を待つ盲目の妹のシルエットは、黒澤の『』とは比べ物にならないほど美しい。技術はしっかりしている。製作スタッフが諸外国の映画を学べる環境にあるのが判る(本作の脚本がキム・イルソンと記されたサイトもあり、彼が諸外国の映画収集通なのは知れた話であるから、親分の財産を眺めただけかも知れないが)。

最後にパルチザンの兄が演説を始める件は、旧ソ連映画にもよくあったお座なりプロパガンダで、ここに物語を収斂させるのは、カーボンコピーされた作品群を愛する者として許し難い。「革命後は楽しい生活が待っている」などとアジられても困ってしまう。スタッフは何を思ってこれを付け足すのだろう。体制側なのか、云わされているのか。軍部に云わされている(よくあることだ)なら、気の毒でならない。

なお、日本軍と結託する地主がキリスト教者として描かれているのは興味深い。

(評価:★2)