コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] サン・ジャックへの道(2005/仏)

ハト派フェミニスト=コリーヌ・セローが撃つ「既成概念」
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







赤ちゃんに乾杯!』では男どもに子育ての苦労を与え、前作『女はみんな生きている』では奔走する男どもを鼻で笑いながら「女は女である」とゴダールみたいなことを宣言するなど、その軽妙な作風の裏で常にフェミニズムの臭いをちらつかせてきたコリーヌ・セロー。同じ女流監督のシェーン・カンピオンが戦う姿勢を刺々しく前面に押し出して「社会の中で抑圧される女性」を描写するのと対照的。

対照的だが、最終的に撃つべき相手はある意味一つである。差別を生み出すのは“社会”なのだ。 今回、コリーヌ・セローは、女性に限らず様々な差別に対して、社会の「既成概念」を皮肉っているように思える。

中でも宗教批判は特徴的。 実際、どこの国でも女性差別の根源は宗教にあるとまで言われていて、女は不浄だの顔を隠せだの神聖な山に登るなだの、果ては「馬小屋で誰とも分からん子供産んだけど処女だったからOK」みたいな噴飯物の宗教まである。 この作品で描かれる宗教の伝道師達は誰一人優しい手を差し伸べることは無く、2階から鍵を投げつけたり、儀式のために願い事を改竄したりする。

これだけ宗教批判を全面に押し出しながらストーリーの根幹が「巡礼」なのだから、最終的には本来あるべき信仰の姿でも描くのかと思ったら、実は生家への旅だったという「母体回帰」の物語になっている。

フェミニスト本領発揮とも言える母体回帰の物語は、構成上アッと驚く意外な展開なのだが、いがみ合っていた人々が旅を通じて理解し合うという至って“普通”のストーリー展開が、この映画の印象をひどく平凡なものにしているように思えてならない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。