コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] メグレと若い女の死(2022/仏)

犯行の動機より捜査の動機を解き明かすドラマ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







パトリス・ルコント作品を観るの久しぶり。「メグレ」だってジャン・ギャバン版を随分昔に観たきり。『サン・フィアクル殺人事件』だったかな?全然覚えてないけど。正直、若い頃はルコントの良さがイマイチ分からなかったんですが、彼の作品は短編小説のような「小品」のイメージがあります。その特性とおそらく本格推理であろうこの話と上手く噛み合うのか疑問でしたが、なんかねえ、殺人事件そっちのけで、いい「小品」話だったんですよ(笑)

3人の「若い女」が出てきます。上京したばかりでメグレと出会う貧しい女性。資産家の息子と婚約した女性。そして、死体として発見される女性。彼女たちは皆、都会に憧れて上京したという共通項がある一方で、全く異なる立場で物語に関わるわけです。そこで、本来なら、というか、普通描きたくなるのは、「格差」のような気がするんです。都会と田舎、富める者と貧しい者。言ってしまえば「都会でもがく貧乏な田舎出身の女性の苦悩」が物語の中核になりそうな気がします。

ところがこの映画は、お爺ちゃんたちが「娘」を見る視線で描かれるのです。パトリス・ルコントも75歳、ジェラール・ドパルデュー74歳。2人ともかなり老成した感があります。彼らの視線が「女」を見る目じゃなくて「娘」を見る目になったというか。特にドパルデューは長いこと観てますからね。ドパルデューが隣人の人妻とドパルデューする『隣の女』とか、ドパルデューに成りすましたドパルデューが人妻をドパルデューする『ゴダールの決別』とか。

もちろん、捜査の過程で、彼女たちの「物語」が描かれるのですが、実はその掘り下げよりも、彼女たちに接するメグレの「心情」にスポットが当てられる。犯行の動機よりも、捜査の動機。そんな印象の映画でした。

(2023.06.25 下高井戸シネマにて鑑賞)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。