コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パラダイスの夕暮れ(1986/フィンランド)

夢の共演。カウリスマキの『男と女』。ワハハハ、マジでマジで。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2023年に再鑑賞。カウリスマキ長編3作目。カウリスマキの『男と女』。ワハハハ、マジでマジで。本家はレーサーと未亡人だけど、本作はゴミ収集人とスーパーのレジ係。しかもカウリスマキ常連のマッティ・ペロンパーカティ・オウティネンの夢の共演!

小津好きの映画監督は数多いますが、「小津の進化系」を見せてくれるのはカウリスマキしかいない。そうすると当然、常連女優カティ・オウティネンを我が家では原節子と呼んでいるわけです。マッティ・ペロンパーは長生きしてたら笠智衆と呼びたかったんですけど、残念ながら44歳で早死にしましたから。結果、マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの共演は実は希少なのです(たぶん2本しかないと思う)。原節子と市川雷蔵の夢の共演みたいなもんですよ(市川雷蔵は小津映画に出てないけど)。

カウリスマキ作品は、「流れてきた者」か「去る者(去ろうとする者)」の話が多いように思うんです。カウリスマキ好き荻上直子が描くようなちょっと可笑しい穏やかな日常というよりも、実は「流れ者」の物語が本質のような気がしています。

この映画で衝撃だったのは(カウリスマキの映画はいつも衝撃を受けるんだけど)、その「去る姿」を写さなかったことです。普通なら、船上の二人を写して「幸せな未来」を想像させると思うんですけどね。カウリスマキはあまり未来に興味は無いのかもしれません。(たしか本人も過去に興味があるといったことを言っている)

ただ私は、この時代のフィンランドの国情が分からないので、カウリスマキの真意は分かりません。映画は「時代も国境も超えない」ものですからね。でも、この「労働者三部作」の1作目とされる本作から透けて見えるのは、「今とは違う何処かへ」という世情のような気がします。

(2023.08.09 目黒シネマにて再鑑賞)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。