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[コメント] インストール(2004/日)

普通少女の妄想と希望。そして彼女が身に纏うのは女子高生エロス。女子高生であるということは、つまり制服を着ているということ。容器が中身を決定する。そして容器によって決定される中身とは、つまり「空っぽ」。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







16、7の今時の普通少女の妄想と希望。16、7の小娘の書いた話だから許される、とは思う。はじめマンガのオノマトペのように挿入されるSEを多少疎ましく感じたが、話を追う内これは想起される性的なイメージやニュアンスを必要以上に卑らしく感じさせない為の演出なのだろうと思えるようにはなった。

しかしそれにも関わらず、この映画のウリは主演の上戸彩の身体を通じて発散される「女子高生エロス」である。その証に、登校拒否してエロチャットのバイトに精を出している上戸彩は、いつも白ブラウスに紺スカートの女子高生ルックである。それは人の目を欺く為の偽装だというのは如何にも尤もらしい言い訳でしかない。

なぜならば、一体たとえば野暮ったらしいジャージなど着込んで女子高生で御座いと言ってみたところで、果たしてそれは映像的に「女子高生」で有り得るだろうか? それはただの16、7の小娘であり決して映像的には「女子高生」では有り得ない。つまり容器が中身を決定するのである。そして容器によって決定される中身とは、つまり「空っぽ」のことである。(要するに「女子高生エロス」とは、「女子高生」という記号を16、7の小娘の空っぽな身体が纏うことで生じる、一種の幻想である。)

空っぽであることが悪いわけではない。だがこの映画の中で語られる話の中で、空っぽな身体は結局容器を内側から破ることも外側から破られることもなく、元の空っぽの日常に収まってしまう。だったら一体何事だったのか、その間の出来事は。空っぽの内側から夢見られる希望が偽りだとは言えない。しかしそれが本物かどうかは、それが現実的な諸要因と衝突した時にはじめて試されるのではないか。

自分が何をしても空っぽでしかなかったとしても、「空っぽでしかない」ということもまた、そこで初めて確認出来る。だがそんな契機を欠いたこの話には一体何の意味があるというのか。(とはいえコトが終わって金を山分けするシーン、主人公は自分の服を着ている。そしてラストシーンでは制服を着てはいるけれど季節は移り変わっている。「変わっていない」と言いながら、それでも少しは変わっているということなのかもしれないが。)

16、7の小娘の書いた話なのだ。当たり前のことかもしれない。16、7の小娘には、まだ未来と将来の区別もつかない(つけない)まま漠然と夢を見る(それを口にする)自由がある。しかしそれは人間ドラマとは言えないだろうとは思う。そこには物語を、意味を生み出す自己の、そして他者の身体が欠けている。

そしてそのうえで、更にこの映画で引っ掛かること。それは一言で言ってしまえば、そのインターネット臭さである。この作品(原作)がそれなりに評価されたりしたことには、恐らくはそのインターネット臭さがいい意味で(新しい時代の符丁として)捉えられたのだろうけれども、ただ話の触媒としてそれを取り扱っているというよりは、そのインターネット臭さが主人公などの人物造形や世界観までを規定してしまっているように思われたことだ。

現象する世界のすべてを無自覚に取り換えのきく情報として捉え、それらの中心に暗闇の(密室の)中の自分が居る、という感覚。その暗闇の(密室の)中に立ち現れるものすべては、本質的には彼女の妄想以上の存在ではない。それはエロチャットバイトのお客達は勿論、彼女をその場所に導いた少年とてその例外ではない。すべては彼女の妄想であって、そしてそれがこの作品世界のすべてである。彼女はそれを無意識に分かっているから、最後にその外側への希望を語りはするが、希望は語られ、確かめられるだけで、その為の一歩はどのような形になるのかは示されはしない。

この作品(原作)が評価されたのは、今風のインターネット臭さを身に纏いながらも、そこから希望を語る真っ当な若さが見出されたからだろうとは思うが、本当に物語と言えるものは、はじめの一歩の先にこそある(多分)。あるいはそこに何もなかったとしても、何もなかったことを見出すのも、やはり自分の物語である。

…こんな感じであろうか。下世話なことを言えば、うら若い乙女の如何にも少女めいた性への初心な好奇心、そこから生じる多少エロ味がかった妄想は、それだけで商品価値はある。映画の方はそれを充分意識していたなぁと思うが、まずは見世物でもある映画は、それでいいのだと思われる。初めて上戸彩にエロスを覚えることが出来たし、そしてまた上戸彩の落として見せた涙は、見世物として真実だった(と、思う)。

でもやっぱり、画面や演出のケーハクがハナにつくので、☆2つ。

(評価:★2)

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