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[コメント] 不灯港(2008/日)

ズレたオカシサが可笑しさになるというユーモアはセンスだとは思うけど、それが100分近く、一篇の映画の間持続、あるいは累乗したかというと、しなかったようにしか感じられない。巧いけど、強くない。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不勉強というかなんというか、カウリスマキという監督の映画は観たこともないのでそれについてはなんとも言えないが、ごく抽象的に言うと、「巧い」のかも知れないが、「強さ」を感じないと言いたくなる。一言で言えば、「だからどうした」と言いたくなる弱さ。敢えて抑制しているのか、それとも抑圧されているのか。抑圧されているとしたら、何に抑圧されているのか。

如何にもわざとらしい浮いたセリフ回しやら、ある意味サイレント映画的な動作(アクション)の演出やら、密かにシンメトリックな構成やら、「巧い」のかも知れないとはなんとなく感じるが、そんな理性的な理解を超えて否応のない肯定的な感情を喚起されるような「強さ」を感じない。「同情なんかしたらぶっ殺す」という唐突にも聞こえる際どいセリフ。意味深なラストカット。全般的に抑制されているからこそギラリと光る一瞬ではあるようには思うが、それだけでこの映画を肯定する気にはちょっとなれない。

人のセックスを笑うな』という映画を観ていた際(とくに前半)にも微妙に感じたが、なんだか、今現在の日本の若い人間特有の、一足飛びに老成してしまっているような優等生ぶりが、端的につまらない…と云うか、食い足りない。映画が映画の中に自足してしまっていて、画面のこちら側に迫り出してこない。

(評価:★3)

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