コメンテータ
ランキング
HELP

[あらすじ] DOG STAR MAN(1961/米)

端的には,愛犬とともに雪山を登る男の叙事詩である.が,怒濤の如く押し寄せる多種多様多元多彩なイメージの万華鏡的世界に,視る者の脳細胞はにゅーろんばちばち〜と発火.するだろう実験映画の金字塔.「視る」欲望を満たす78分.
moot

本作は「Prelude」と「Part1〜4」から成る.監督曰く,「Prelude」は次の日を仄めかすような,男の夜の夢,細胞内の夢,「Part1」は山登り,「2」は誕生,「3」は性的な白昼夢,「4」はこれらすべてを反復している…

…らしいが,ナレーションも音もない本作は,ストーリーを追うべき秩序だった映画ではなく,混沌を混沌のまま体感するための映画.といわれ,過激な純粋主義が陥る貧血性の衰弱現象を克服する手がかり.ともいわれる.

タイトル「DOG STAR MAN」もまた重層的である.まず一語ずつ「犬 星 男」と読める.また「DOG STAR」は大犬座の首星シリウスの別名であり,1959年に事故死した,監督の愛犬シリウスへのトリビュートともいわれる.さらに,そんな愛犬と男の隔たりを「STAR」という語で隠喩している.かもしれない.ともいわれる.(余談だが,瀬々監督の『DOG STAR』は本作へのオマージュであり,犬と少女がシリウス星を眺めるシーンがある.と瀬々監督本人が語っている[1].)

かくも美しき「DOG STAR MAN」の始まりは,高校時代にあったと監督は語っている.学校の帰り道,彼はよくドラッグストアに寄り道して,コーラや文庫本を買っていた.そんなある日,「スタインベックの本みたいじゃないか」と手に取った怪しげな小説が「Dog Star Man」だった.読んで彼は驚いた.こんな美しいタイトルの本が,こんなお粗末な文章の,こんなつまらないストーリーだとは何て酷い話だ,と.それが本作の始まり.なのらしい.

本作の制作開始は1959年,撮影は1959-1960年,その後,気の遠くなるような編集を経て完成した.本作はスタン=ジェーン夫妻(当時)によって制作され,クレジットは「by Brakhage」となっている.スタン監督のミューズだったジェーン(Jane Wodening)は撮影も行っている.登場人物はすべて夫妻の家族である.

Prelude/26分/1961年,Part1/30分/1962年,Part2/7分/1963年,Part3/8分/1964年,Part4/7分/1964年,完全版/78分/1961-64/16mm/color/silent.

このあらすじは主に STAN BRAKHAGE FILM EXHIBITION のカタログ[2]を参考にまとめました.

参考文献

[1] スタン・ブラッケージ 映画の極北 メールニュース No.5,http://www.mistral-japan.co.jp/film/mailnews05.html,2001

[2] ブラッケージ・アイズ実行委員会(編),"STAN BRAKHAGE FILM EXHIBITION ブラッケージ・アイズ 2003-2004",ミストラルジャパン,2003

(評価:★5)

投票

このあらすじを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のあらすじに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。