[コメント] リベリオン(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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映画を計る基準はの一つに、どれだけモノマネがしたくなるかというのがあるのではないか。ブルース・リーしかり、『マトリックス』しかりだ。『タイタニック』の「飛ぶ」シーンや『世界の中心で愛を叫ぶ』の「助けてください!」のように、アクション映画に限ったことではないだろう。
その観点でいうなら、これは無茶苦茶にはまった。ちなみに、テレビ東京で放送されたときの、番組最後のDVDプレゼントの宣伝文句が「ガンカタを極めたいあなた、必見!」、これまたツボに来た(応募しちゃったよ……。はずれたみたいだけど)。『マトリックス』の最大の弱点「俳優の動きの切れが悪くて、カンフーの達人に見えない」を克服した点は注目すべきだろう。
ただ、ガンカタ以外のところは、気に入らないものが多い。ストーリーは粗が多い。感情を持ってないはずの人間が、慌てふためいたり、出世を望んだりしている。未来都市のデザインも好きになれなかった。「感情を無くした人間が築いた冷たい都市」ということなんだろうけど。(『メトロポリス』と似ているところがあるのはオマージュだろう。目のアップは『ブレードランナー』か?)
そもそも管理社会や支配、あるいは自由といったものをテーマにしたことが気に入らない。こうしたテーマは『マトリックス』を連想させる。(主人公がクライマックスで来ている白服は、『ドラゴン怒りの鉄拳』のブルース・リーへのオマージュだそうだ。もしかすると監督にとって何より大切だったのはそちらで、それまでの黒服は『マトリックス』の真似というより、単純に白の逆、支配の象徴なのかもしれない)アクション・シーンに関しては少なくとも『マトリックス』との差別化を図ったようだ。露骨なCGやスローモーションは使わない(むしろ早回しを使っている?)。弾丸を描かず、サングラスもかけない。それならストーリーも差別化を図って欲しかった。管理社会への反乱ではなくしてほしかった。
いや、既成の作品と似ているのが悪いのではない。この映画はガンカタが全てと言ってよい。ならばストーリーなど無くてよい。「頭をからっぽにしてアクションを楽しむ映画」でよかったのだ。舞台は現代でもよかったし、主人公の敵は連続殺人犯でも怪獣でもよかった。管理社会とか支配とか自由とか、堅苦しい教訓が、気楽に見ようとするのを邪魔する。
大体、少林寺と違って無表情な人間たちが黙々とガンカタの訓練をしているシーンを見ると、ガンカタというのは、「感情をなくしたロボット人間だからこそ、精密な「型」をプログラム通り繰り出すことが可能となる」ものであり、支配の象徴に見える。これでは素直にガンカタ万歳!と楽しめないではないか。だからクライマックスで描くべきなのは、「ガンカタという最強の型」+「人間の自由な思考」=「最強の主人公」、という図式である。ところがクライマックスの主人公は、(自ら感情をコントロールしたとはいえ)嘘発見器の針を止めるほど無感情で、それまでと同様、ロボットのように表情が乏しく、自由な感情を手に入れたとは思えないのだ。やはりストーリーは違うものにしてほしかったなあ。
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