[コメント] 恋の二十分(1914/米)
序盤はチャップリンがカップルの邪魔をするシーケンス。中盤、女性の方ばかり見ている男性のポケットから、時計を盗むシーンがあり、こゝから時計をからめた意外性のあるプロット展開になるところが本作の作劇の妙味だろう。
もっとも、映画的な造型で書いておきたいのは、むしろ序盤のカット割りだ。まずは、登場間もなく、チャップリンは煙草を喫いながらいまいましい顔をして画面右を見る。すると、ベンチに座って抱きつきキスする男女が繋がれるのだ。その後、またあきれ顔をしながら画面右を見るチャップリンのショットに戻る。これって、ほゞチャップリンのミタメを表現したカット割りになっていると思える。この後、チャップリンは画面右に歩きだしてフレームアウトし、カットを換えて、ベンチの男女の画面に左からフレームインする。実にスムーズなカッティングだ。
もう一つ、チャップリンが一目惚れと思しき、気になった女性を追いかけるシーンで、木立と葉がいっぱい茂った場所の前に来た彼が、葉っぱをめくると、向こう側に座っている男女が見える。次にカットを換えて、葉っぱの向こうへ出たチャップリンを180度転換して見せるのだ。さらに、この男女に突き飛ばされた彼が、元いた側(葉っぱの垣根の向こう側)へ転がり込む。これをまた180度カメラ位置を転換し撮って繋ぐ。
これらの例は、まだ同一空間内でカットを割るテクニック、例えばマスターショットやツーショットから、一人を抜いて撮るとか、バストショットの切り返しに持っていくとか、あるいは、ポン寄りとかポン引きとか、アップ挿入といったテクニックがない時期ではあるが、しかし、かなり自由な空間の見せ方を既にチャップリンが身につけていた、ということが分かるサンプルだと思う。
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