[コメント] 死刑執行人もまた死す(1943/米)
ブレヒトのテクストに批評的もしくは幻灯的な映画文彩を期待したかったSO-SOドラマ
フリッツ・ラングとベルトルト・ブレヒトのタッグというだけで否が応にも盛り上がる期待の作品であるが、舵取りラングに映画文彩を駆使した采配の妙を見出せぬ残念な結果である。さすがの影の演出によって劇作の陰影を象徴的に構築する手腕は生きているが、いかんせん物語がその文節の細かさによって室内劇的空間に閉じ込められたような窮屈さでドラマが浮き彫りにならないという宿命を負っている。物語の骨子がストレートに反ナチスを示している分、真に迫るサスペンス空間を生むためには、より静なる脅迫ムードを画面に滲ませる決定的な描写が必要であったと思われる。その意味で情緒を排したサウンドトラックメイキングは確かな選択であったといえるものの、敵役として配されるナチス側の人物造形が対峙する抗力分子と対等に見えて葛藤の力学が弱体化し、論理に偏るきらいとなったドラマは低空飛行である。当時の社会情勢、ブレヒトのテクストの前で硬くなったか、ここでのラングの演出は平凡である。端整ではあるが躍動がない。やはり映画は語感、口調のものであると信じたい。
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