コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 1492 コロンブス(1992/米=仏=スペイン)

先人達へのレクイエム(鎮魂歌)
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







某チャットにて。

どなたかが、『1492 コロンブス』の海波を、淀川長治氏が誉めていた。と、話されていた。どの波か。敬愛する淀川先生に思いを馳せて映画を観直す。ファースト・シーンの意気揚揚とした荒波か、或いは、航行中の月に照らされた波光きらめく海波(『フェリーニのアマルコルド』の海を彷彿させる。)か、それとも、新大陸の悠然と寄せては返す静かな青波か、または、繁栄した王都の教会から見える遠景の茫洋とした浦波か。特定は、出来なかった。しかし、この映画の、海が綺麗。星が綺麗。船が綺麗。旗が綺麗。光(撮影エイドリアン・ビドル)が綺麗。映画を、実体験するような凄い感覚を淀川氏は持っておられた。そういえば、影武者の風がいいとも誉めておられた。ですね。

命の限りの挑戦者。

この映画の中盤に、血尿を流す瀕死の移民者の描写がさりげなくあった。確か、マイケル・ダグラスが語った『ブラック・レイン』出演時の松田優作のエピソードも、同じような姿だった。(惜しくも、映画完成直後、膀胱ガンで逝去した。)ハリウッド進出を目前にして、最高の輝きを放って急逝した松田優作。『ブラック・レイン』の監督であるリドリー・スコットは、この描写を、脳裏に焼きついた記憶をふと表出させたのか、或いは、松田優作を哀悼する意味で付加したのか、映画を観る限り特定は出来なかった。しかし、己の力の限り突き進んだコロンブス松田優作を重ね合わすと、何とも雄大で、感動的ではないか。愉快ではないか。そして、ヴァンゲリスの電子音が、いかにも深遠に感じられて来て涙が出てきた。

霧の中から、現われる新大陸の森のシーンが、忘れられない。思いは霧の彼方に。霧の向こうに。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ina

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。