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[コメント] 荒ぶる魂たち(2002/日)

いつもとは一味違った三池崇史が真面目に見せる仁義が熱く、そして渋い。さらに加藤雅也の抜群の格好良さがとにかく光る。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 三池崇史作品としては様々な点でかなり異色。前作『カタクリ家の幸福』(前作と言ってもわずか1ヶ月前の作品だが)のような作品とは全く種類が異なり、至って真面目。三池作品の中に数あるヤクザ映画と比べても一味違う。尺も2時間半と長め。渋く熱くクールな群像劇で三池崇史の新境地と言えるだろう。

 この映画もいつもの三池作品と同様に、相変わらずキャストに恵まれている。白竜松方弘樹といったいかにもな俳優達が脇をしっかりと固める。三池モバとして監督自身もちゃっかり出演してるのも面白い。また、やたらと出演本数の多い竹中直人は最近はどの映画でも異様なハイテンションの一点張りで少々飽きていたが、今回はしっかりと実力を発揮。役としても重要なので印象度も高い。そしてなんと言っても加藤雅也に勝るものはいない。格好良すぎです。銃を構えた時の目つきが最高に格好良い。思わず男惚れしてしまう格好良さ。雰囲気が映画にあってたと思うし、その渋さが良い。

 ストーリー自体も良質。2時間半の尺にも無駄は感じられず、さほど苦痛もない。登場人物が多いが、その分時間を使ってしっかり人物を描写している。テーマとしてもヤクザ映画らしい仁義をしっかり描き、加藤雅也演じる剣崎と竹中直人演じる樋口の師弟関係からは響くシーンもあった。樋口が射殺されるシーンは絆を感じる入浴シーンの直後だったのもあり、結構響く。また、仁義を重んじる剣崎の生き様が非常に格好良く見える。自然光にこだわったという、その雰囲気やカメラワークも野心的で良かった。上で三池っぽくないと書いたが、細かい部分では彼らしさは垣間見れる。剣崎がトラックで叫びながら乗り込んでいくラストはその大胆さが三池らしいと思った。だが、不満を言うと、あの終わり方だと冒頭から語ってきた剣崎の恋愛のエピソードが全く生きてこない。一貫させるなら、最後は恋愛エピソードの語りが良かったと思う。逆に言えば、恋愛はカットしてもっと男臭さを剥き出しても良かったと思う。

 地味ながら熱く渋いこの映画は、三池流の『ゴッドファーザー』や『ヒート』のように思えた。

(評価:★4)

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