[コメント] ヴェルクマイスター・ハーモニー(2000/ハンガリー=伊=独=仏)
鬱屈した空気のなかヤーノシュ(ラース・ルドルフ)は、自身の拠りどころを不変の象徴としての天体法則や、生命の偉大さの体現であるクジラの巨体に漠然と見いだしているようだ。主体性の喪失は停滞と軋轢、扇動と暴走、暴力と自滅を経て振り出しにもどる。自戒の物語。
権威の喪失によって発生した民衆の不協和音(不調和)は、その内部にいる個々人の巨視点を奪い思考を停止させる。そのさまを見とどけた新たな権威の敷衍をたくらむ者は、さらなる混沌を仕掛け暴力によって民主の気力をも奪い、かりそめの和音(調和)を与えることで民衆の不安と不満を覆い隠す。
ハンガリー動乱は1956年。タル・ベーラの生年はその1年前だ。
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