[コメント] 妖獣都市(1987/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
菊池秀行の出世作ともなった同名小説をアニメ化した作品。菊池秀行作品は特にアニメ関係には人気で、これまでにも何作かの作品がOVAや映画で作られているが、本作が一番出来が良かったかもしれない。
実はこの世界観をアニメにするには、ヴァイオレンス色とエロティックさの兼ね合いが一番難しいものなのだが、極めて短い間ではあったものの、当時の日本アニメはその辺ボーダレスに描写することが出来た、その時期に作られたというのが一番の強みだった。この短い期間こそが、あるいは日本のアニメが最も躍進した時期だったのだろう(とはいえ、この時期にやりすぎたお陰で、これから相当な期間低迷期に入ってしまうのだが、ここで培われた技術は現代のアニメーションの根幹をなしている)。その強みというものを感じさせられる作品に仕上がっていた。
本作の場合、ヴァイオレンス色は行くところまでいった感じで、更に表現ぎりぎりのエロティック描写もあり。モザイクぎりぎりの線まで行っていた。それでも原作ほどドロドロしておらず、ヒーロー性の高いものに仕上がっているのは演出の巧さによるもの。本作で分かるとおり、日本のアニメ界には、川尻という監督がいる!
本作の演出の良さは当時のOVA流行りの中でも群を抜いており、徹底的に少ない動画(総作画枚数1万5000というのは、並行して制作されていた『AKIRA』(1988)に較べ、実に1/10)を動き有るものに見せた技術は、今観ても凄まじいレベル。この辺は完全に技術的な話になるのだが、たとえば主人公の滝がマグナムをぶっ放すシーンなんかは、実際よく観てみるとほとんどセルを使用してないのが分かる。画面をぶらす事と、光を使うこと、そして撃った後で滝の背中に当たってるコンクリートがひび割れてる、という描写で、どれだけ威力の凄まじいものを撃ったのか。と思わせることに成功してるし、観た瞬間は、これがよく動いているように錯覚させてしまう。画面を暗くした上で、激しい光を多用することも、動きを錯覚させるのには一役買っている(ちなみに、いわゆるピカチュウ事件以後、それは自粛されているが)。
実際、今観ても凄まじいクォリティを持つ作品。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。