[コメント] ぼくの好きな先生(2002/仏)
すべてを奪っていく自然の中で。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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舞台はけっしてほのぼのとしたのどかな村ではない。厳しい自然の中を生き抜く人々の暮らしが時折さりげなく映し出される。ピクニックに出て生徒の一人が迷子になったとき、子どもがロペス先生を中心とした空間の外に出てしまったとき、外には容赦なくすべてを奪う自然が渦巻く。風のどよめきだけが響く草原の姿がとても印象に残る。
自然と共存していくためには、それを征服しようとするだけでは立ち行かず、時に季節が来るのを辛抱しなければならない。そんな村の現実と、子どもの中から思考が生まれてくるのをじっと待つロペス先生の姿とが重なっていく。(★4.5)
*この作品を観て、観る側はロペス先生の人格と監督ニコラ・フィリベールが映し出すものに対して無条件の信頼感を投げ出す(ロペス先生の全てを見たような気になる)。だからこそ、私はロペス先生が起こしたあの金がらみの裁判に一時期ショックを受けてしまった。しかし、ドキュメンタリーはあくまで現実を丸々全部映し出すものではないし、そもそも初めからそんなことは不可能なのだ。ドキュメンタリーが(たとえどんなに被写体と接近していたとしても)被写体と一歩距離を置くのと同様、観る側もドキュメンタリーと一歩距離さえ置けば、ドキュメンタリーの外で起きたことに惑わされることはなく、ゆえにこの優れたドキュメンタリーの価値が下がるものではないと悟ることができる。そんなあたりまえのことを再認識させられた。
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